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Blog 稽古徒然

間を捉える

 先日、魚住孝至氏の「宮本武蔵-兵法の道を生きる」岩波新書を購入して読み始めてみたら文体が自分好みで読みやすく久しぶりに一気に読んでしまった。宮本武蔵の五輪の書に関しての本はこれまで何冊か読んできたがここまで虚実を廃止、史料と当時の流れを踏まえて書かれた本は読んだ事が無かった。五輪の書(宮本武蔵)について興味がある人にはお勧めです。

 五輪の書と兵法三十五箇条に「枕をおさへる」という言葉が出てきます。端的に書くと「相手の出合頭を抑える」という事になります。剣術で云えば、相手が斬る・打つといった動きの心や体の出だしを取るという事になるかもしれません。これは特別な技術ではなく日常にありふれたコミュニケーションの中に有る現象の一つでもあります。親が子の姿を捉えて、言葉になる前にその意図を感じるのと同じことです。

 師匠からは「間を捉える」という形で「枕をおさへる」事の本意を教わり、初めてその技術に触れた時は何と玄妙なものだと思いました。後年その一端を知る様になると当たり前の風景になっていたのは今思えば不思議な感じです。間を捉える為には、自分と相手の中心感覚を育てる事が大切になります。稽古中に「中心を見る」「場を忘れない」「顔を上げる」など声を掛けますが、それらは中心を捉え育てる事に繋がるモノです。私自身が忘れない様に云っている場合もありますが。

 まずは間を感じる事、その為には軸を立て、心身を緩める事、そして相手の中心を見る事からになります。そこを大切にしながら稽古をしてもらえれば自ずと「枕をおさへる」「間を捉える」事は観えて来るかと思います。